スタートアップへの転職の際にストックオプションで夢を見る人は少なくないように思います。一方でストックオプションについて正しく理解をしている人は求職者側だけでなく、採用する経営陣もあやふやなことが少なくなく、誤解のあるまま採用に至ってしまうケースも見受けられます。今回はストックオプションの現実的な側面について伝えるとともにストックオプションを理由に転職先を選んではいけない理由について説明したいと思います。

ストックオプションの多くは実現しない

ストックオプションを行使する条件は色々設定されていますが、ストックオプションは上場するまで行使できないように設定するのが多くあります。

2017年に上場したUUUMの行使条件は下記の通り

④権利者は、会社の株式のいずれかの金融商品取引所への上場(以下「株式公開」という。)がなされるまでの期間は、本新株予約権を行使することはできないものとする。

VCから資金調達できる会社は年間1000社程度、年間の新規上場企業数は100社程度で、そのうちVCから出資を受けてる会社は半分程度だとしても、VCから資金調達をしたとしても5%程度の確率でしか上場することはできません。

※2016年の未公開企業の資金調達社数は979社(出典:日本の未公開ベンチャー、資金調達総額が2000億円を突破——1社当たり調達金額が大型化

幹部候補でなければストックオプションは下がった給与の補填という意味合いが強い

・ユーザベースの梅田氏のストックオプションの解説に詳しいが、ストックオプションの性質は2つあります。①メンバーレベルの人たちに対して下がった給与を補填する意味合いと②幹部候補が自社の業績に対して責任感とロイヤリティを持って働いてもらうためのものの2つになります。

SOは正解がないだけにスタートアップ経営者が共通して悩むテーマですね。やってみて初めて分かる事が多く、我々も反省点が多いところです。まず、SOを出す時にその目的が「リワード」なのか「ロイヤリティー」なのかをしっかり整理する事が大切だと思います。我々はIPO前にはほぼ全員にSOを入社時期とタイトルのマトリックス表に応じて傾斜配分しましたが、これは転職時に給与を低くして入社してきてくれたメンバーに対してその差額分を補填するための報酬(リワード)が目的でした。そのため、このSOによる会社へのロイヤリティーや報酬以上のコミットは期待せず、低い給与でここまで頑張ってくれて有難う、という一方的な感謝の形としてのSOとして位置づけにしました。そのため、独自の行使条件はつけず、自分の財産としていつでも好きな時に行使して良いよという設計にしました。一方、幹部メンバーの成果は会社の成長により直接的にリンクするので、会社へのロイヤリティー、コミットを高める事を目的としたSOを発行し、これは独自の行使条件をつけました。このタイプのSOは一般論として、最低限サラリーマンでは得られない報酬である事が大切であると思いますので、最終的に3億円〜5億円の報酬を得られる事が設計の一つの目安かと思っています。

出典:上場前ベンチャーでストックオプションをもらえば億万長者になれるのか?

CareerDBの調査によっても、上場した時の社員が保有するストックオプションの資産価値の中央値は520万円、取締役レベルでも1億円程度となっています。

上場時のCEO、取締役、従業員、VC、事業会社のそれぞれの持株比率、大半を占めるCEOとVC

上記の梅田氏のコメントにもあるとおり、中央値で520万円というストックオプションの付与は夢を見させるものというよりも、給与を下げて転職してくれたメンバーに対する保証的な意味合いが強いものであるといえます。裏を返せばメンバーレベルではストックオプションでは大金持ちになることはできないということもいえます。

ストックオプションは行使可能割合が設定されていることがある

ストックオプションでは行使できる割合を設定していることが多くあります。下記も2017年に上場したUUUMの行使条件になりますが、上場したとしても1年が経過するまでは行使することができません。更に1年経過しても行使できるのは50%までで、全て行使するためには上場から3年経過する必要があります。

(3)行使可能割合

以下の各期間において権利者が行使することができる新株予約権の数の上限は、それぞれ以下に定める数とし、これに反する行使をすることはできないものとする。なお、以下において「割当数」とは、割当日において当該権利者に割り当てられた新株予約権の数を意味する。

株式公開の日から、株式公開後1年間が経過する日まで:割当数の0%

株式公開後1年間が経過した日以降、株式公開後2年間が経過する日まで:割当数の50%

株式公開後2年間が経過した日以降、株式公開後3年間が経過する日まで:割当数の50%

株式公開後3年間が経過した日以降:行使数の制限はない

条件は各社によって異なりますが、上場したらすぐにストックオプションを行使して売ることで株価を下げてしまうケースや売ってすぐに辞めてしまうケースを防ぐために上記のような条件を課している企業は少なくありません。経営者側の視点からすれば予め予防しているといえます。せっかくストックオプションを付与されて上場しても、行使するまでの期間が長過ぎるために、ストックオプションの行使に固執するよりも早めに次のチャレンジをすることを優先して、1000万円程度のストックオプションを諦めてしまう人も中にはいます。ここは金銭と時間のどちらを優先するかによって人によって大きく異る決断をするように思います。

転職するならストックオプション以外の理由が重要

自分自身のキャリアに照らし合わせた時に「成長」できる環境であること、「やりがい」を感じることのできる環境であること、「メンバー」とのフィット感などストックオプション以外の理由がメインでないと辛い転職になってしまうでしょう。「ストックオプションがあるからいいや」と転職を決めるとその現実を徐々に知ることになり、後悔することにも繋がりかねません。スタートアップに転職するメリットとして、自分が未経験の一つ上のレベルの業務にチャレンジできることや、一緒に働くメンバーを選ぶことができることが挙げられます。給与やストックオプションなどの待遇面に目を向けすぎると結果として報われないケースが多いので、現実を直視して決断することをオススメします。

まとめ

ストックオプションは甘美な響きがあって採用にもよく使われますが、従業員にとってはおまけ程度に考えるべき性質が強いのがストックオプションの現実だといえます。ストックオプション以外の部分での経験で成長をすることで、給与が下がったとしても将来的にトータルのリターンを考えるのが自分自身のキャリアを考える上ではよいと言えるでしょう。